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自然災害から学ぶ危機管理 岡田弘さん講演(2)
友の会新聞 2012.01

  大地震や大きな津波が起こる可能性を認識して、いざという時にどのように行動するかなどを普段から考えていれば、多くのことが実現できたのではないだろうかと思います。
 日本はどういう国かということについて、日本人はあまり知らされていませんが、外国では常識です。有名な科学雑誌に紹介されていますが、ドイツの保険会社が世界各都市で地震や津波などの自然災害や都市化などを評価して、大都市のリスク指数を出しています。アメリカのサンフランシスコ、ロサンゼルスもその値が高いのですが、日本の首都圏、東京、横浜はロサンゼルスの約7倍とリスク指数が世界一です。つまり、世界一危険な都市は、東京・横浜圏ということになります。保険などを商売にする人たちにとっては常識です。
 では、アメリカはどうしているか。アメリカは、マグニチュード9の超巨大地震を想定していました。そのときに、どれだけの道路や橋が使えなくなるかなどの試算を持ち、対策をとっています。地震の多い西海岸には原発をなるべく造らないようにしています。
 ところが、どこに造っても原発がやられる可能性が高い日本で、そういう危機感を持っていませんでした。なぜ、日本は危機感を持たなかったのか。

普段から災害に対する危機感を

 日本における重要な地震対策目標は、はっきり言って二つあります。直撃で下敷きにならないようにすること、そして津波から逃げること。これがいちばん大事です。頭上に物が落ちてこないように整理しておくことも、ずいぶんと役に立ちます。しかし、建物の倒壊については耐震化に尽きます。たとえば阪神・淡路大震災で犠牲になった方は、若い世代と高齢者の世代にピークがあります。なぜかと言うと、高齢者の多くは古い木造の建物の一階に住んでいました。若い学生たちはお金がないですから、やはり安い民間のアパートに入っていました。そのために、若い世代と高齢の世代に犠牲者のピークが出てしまったのです。これはまさに直下型地震の特徴であります。
 一方、津波については事前に避難する、高台に行くという対策に尽きるわけです。今回の津波災害の全体を通してはっきり言えることは、危機感を持って行動した人の多くは助かったということです。たとえば、釜石市の中学生、小学生や多くの幼稚園、保育所の園児たちでした。彼らは一般に災害弱者とみなされています。しかし、今回いちばん助かった率が高かったのは、こういう子どもたちでした。
 原因は非常にはっきりして.います。危機感を持っていて、行動したのです。子どもたちは保育士や先生が助けなければ助からない。しかし、少人数の大人で自分たちで何もできない大勢の幼児たちを動かすことはとてもむずかしいし、時間がかかってしまうことを訓練を通じて学び備えていたからです。

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