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自然災害から学ぶ危機管理 岡田弘さん講演(1)
友の会新聞 2012.01

 2011年10月15日、札幌市内で行った第8回友の会活動交流集会で、北海道大学の岡田弘名誉教授が「災害に強く、安心して暮らせるまちをつくるために」と題し、大きな被害をもたらした東日本大震災などの自然災害から学ぶべき危機管理について講演しました。要旨を紹介します。(編集は友の会新聞編集委員会)

「想定外」ではなかった

 3月11日の経験、ああいう経験を日本は過去何回も繰り返してきたと思います。あの時、想定外という言葉が何度も繰り返されました。あの災害は想定しておくべき現象で、想定外とは言ってはいけない現象でした。
 1854年、安政東海大地震の時の下田の港の様子を描いた絵と、河北新報に出ていた今回の東日本大震災の写真を比べると、こういう大災害が過去繰り返し起こってきたことがわかります。過去の経験を先人が記録として残している以外に、津波堆積物で過去の歴史を紐解くことができるようになっています。
 それなのに、一部の専門家が想定外という言葉を使い、あるいはそれを聞いた原発推進者が「想定外だから、しょうがない」という言い方をしました。やはり、おかしいのではないかと思います。
 私たち研究者はいつも比較します。何が似て、どこが違うのか、そして前にできたことが、なぜ今回できなかったのか、進歩してきたはずなのに、どうして退歩したのか、ただならぬ事態と認識できただろうか。地震が起きたときに、長い周期で長い時間揺れていました。長い時間と言っても、実は3分か4分です。そのことは地震計の波計記録から詳しくわかっています。
 北海道にも3月11日と同じような連動型の大地震が過去5百年毎に何回も繰り返してきたことがわかっています。同じことは西日本でも言えます。日本海側でも確率的に言えばさらに低くなりますが、決して大津波が起こらないわけではありません。奥尻も、地震発生前段階で、あれだけの津波が来ることを予想していた人はいなかったわけです。しかし、そういうことは起こるわけです。

日本の首都圏は世界一危険

 いちばん悔しく思うのは、これだけいろいろなことが進歩して日本の経済発展を裏打ちした科学技術があるにも関わらず、命を守るためにきちんと使われていないことです。新しいことを時間をかけてやらなくても、いまできることはたくさんあると思います。日本ってこんな国だっただろうか。もっと、しっかりとリスク管理ができる国ではなかったかということです。

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